ほそやま薬局 神奈川県川崎市

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また、夢を持つ薬剤師を応援する薬局経営者も紹介をしていきたいと考えています。
志の高い薬局を中心に、素敵な薬剤師になれる。人としての成長ができる。そんな薬局をフリー薬剤師.comでは
インタビュー形式で紹介をしていきます。
共感・共鳴できた薬局には勇気をもって一歩踏み出してみてください。小さな一歩が人生を変えるきっかけになると思います。今回、神奈川県川崎市にある”ほそやま薬局”の経営者”山本 達夫”さんに取材しましたので、夢を叶えたい薬剤師さんにとって素敵な薬局と感じて頂けたら嬉しいです。


―――――ほそやま薬局様が立ち上げられた経緯、そして他の薬局と違う特徴というところのお話をお伺いさせてください。

経緯は非常に複雑で説明するとなると長い話になってしまいます。まず一番はMRだった時に担当していた病院に勤務されていた医師と仲良くなり、「開業する時は横で薬局やってね。」みたいなことを冗談半分に言われていたのがスタートだと思いますね。この医師が現在の門前のクリニックである、百合が丘すみれクリニックの院長である松浦健太郎先生となるわけですが、自分自身も当時は営業の仕事が楽しかったので薬局を開業する気なんか全くなくて、話半分に聞いていたんです。

その後、私が転勤して担当を離れてから、その先生が病院を辞めることになったんですよ。その時に私の顔が利く病院を紹介しましょうかと先生にお話ししましたところ、「もう勤務医はやめて、クリニックを開業するつもりだから、開業するのに、いい場所を探してよ。」と相談されました。ちょうどその時に昔担当していた横須賀の患者が1日70人ぐらいいるクリニックの先生が病気になられて、またご高齢であったこともあり、もう診療は自分ではできなくなってきた。そのため、クリニックを継承してくれる医師を探しているという話が私のところに入ってきたんです。だから、そこの周りのクリニックの患者数、診療圏に居住する人口、そこから推定される患者数も添えて松浦先生に持って行ったんですよ。結局、そこでご開業はされなかったんですけど、そこまでできるMRが他にいなかったこともあり、いろいろ開業について相談を受けるようになってしまいました。

そして、先生の持っていた、他の開業案件も患者が多く来るのか、閑古鳥が鳴いてしまうような案件なのかを私が分析するようにまでなりました。そんな感じで色々相談に乗っていて、いよいよ現在の場所で開業すると決められた時に「やっぱり、信頼できる薬剤師に隣で開業してほしい。だから、君に自分のクリニックの門前で開業してほしい。大手の製薬会社を退職して、独立することの意味も良く分かっている。君も絶対に成功できるように協力する。」と熱くお話しいただきました。でも、先生が開業されるクリニックの近隣に薬局を開局できる場所が無かったんです。場所もないし、今すぐ開業することは難しかったし、会社を辞めて独立するなんて自分も考えてはいませんでした。
ただ、ちょうどその時がMRの仕事の内容に得意先を接待ができなくなったりして大きな変化が出てきた時と重なっていました。会社も今後の営業活動の方向が定まらず、少し迷走をし始めているように感じました。だんだんと顧客志向の考えが薄くなってしまい、社内向けの資料の作成が評価されるのに最も重要なファクターになってしまっていたんです。自分自身、得意先ともっと向き合って仕事に取り組みたいと思っていたのですが、会社は反対の方向にシフトしていったんですね。 自分がMRとして必要と考えている仕事と会社の求める仕事にギャップを感じ始め、これは自分が考えている営業とは違うものになってしまうと思いました。このままいくとMRはどんどん減らされていってしまうという予感もありました。そんな中で自分自身が次の人生っていうのを考えなきゃいけない時が来たのかなという風に思い始めたところでもあったんです。

実はMRとして担当していた他の先生からも横で薬局をやって欲しいんだけどみたいな話はありました。
しかし、MRとして、医師と接することと、薬剤師として医師と接することは全く違います。MRとして、いい関係が築けている医師でも、薬剤師として、いい関係が築けるとは思えない医師も多いです。薬剤師の意見や薬局の経営のこともしっかりと考えてくれて、きちんと医療のパートナーとして認めてくれる医師でないと、一緒にやっていこうとは思えない。
薬局は自分のお陰で経営できている、薬剤師は自分の言う通り処方しておけばよいという考え方の医師も多いです。そんな医師とはMRとして仲が良くても、とても薬剤師としては一緒に仕事はできないですよね。

でも、松浦先生は違う。医療のパートナーとしての調剤薬局を求めています。松浦先生となら、ただ調剤するだけの薬局ではなく、より良い医療を創造するためのチームとして、お互いを高めあいながら、地域医療に貢献していける。
そんな流れの中、先生が院内処方で開業されて、1年ほど経過したときに、不動産屋がクリニックを突然訪問してきて、「クリニックに近隣で薬局にテナントを貸したいというオーナーがいます。院外処方を始める予定はありますか。もし、院外処方を開始されるようでしたら、薬局をオーナーに紹介したいのですが。」と先生に説明されたそうです。
その時の先生のお返事が「まずは、山本さんに連絡して欲しい。他の薬局を検討するのは、山本さんが開局する気はないと言ってからにしたい。」だったそうです。

その話を聞いて、私の決心は固まりました。ここまで言ってくれる医師とは、もう出会えない。松浦先生の門前で薬局を開業しようと決心しました。医療に携わる者としての高尚なエピソードがなくて、お恥ずかしい限りのところもありますが、開業までの経緯はこんな感じです。

―――――怖くはなかったですか?

怖さはものすごくありましたけど、友人がものすごく助けてくれて、不安材料を消していってくれました。調剤薬局を開業している友人、医師としてクリニックを開業している友人が開業前に色んなアドバイスをくれたんです。私の作った損益収益表を全部確認してもらって、現実とどのくらいのギャップがあるのか。クリニックの現在の1日外来数から推測した、薬局開業時の外来数が現実的であるのか、その外来数で経営が成り立つのか、までアドバイスをしてくれました。
おかげで、銀行に融資の相談に行った際に、「薬局開局の事業計画書で、ここまでしっかりと書けているのは見たことがない。」と褒められました(笑)
また先生が開業されて患者がある程度、増えてからの開業となるで、計算も立てやすいし、処方箋枚数も確保されている。
もちろん、怖さはありましたけど、クリニックの開業と同時に開局される先生よりは、はるかに不安は少なかったと思います。

―――――病院と同時の開局だと大変ですよね。

そうですね。産みの苦しみが無かったというのは良かったです。

―――――最初は患者さんが来ないというのもありえますもんね。

先生も「会社を辞めてまで来てもらう意味は良く分かっているから」と強調されていまして、「何が何でもあなたには成功してもらわないといけない。クリニックの患者がある程度増えるのを待ってもらっても構わない。」ということは言ってくれていましたので、ありがたかったです。

―――――そんな先生はなかなかいないですよね。MRのお仕事を深くは知らないですけど、全国各地でたくさんの先生にお会いするイメージの中で先生との信頼関係はすごいですね。

そうですね。そこまでの先生と出会えたことが、MRという仕事から得た一番の財産だと思います。

―――――もともと山本さんは神奈川県のご出身ですか?

私は大阪の出身でして、大学は京都だったのでこっちは縁もゆかりもありませんでしたが、MRとして9年、神奈川県で横須賀と厚木を担当していました。社会人になってかなりの部分を神奈川県で過ごしましたので、神奈川県で開局して、自分の生活地盤としても居を構えることに関しては抵抗はなかったですね。

―――――これまでMRというお仕事で得意先と向き合っていたいと仰っていましたが、今は患者さんと向き合っていたいということですか?

そうですね、患者さんと向き合っていくのが本当はベストなんだと思いますけれども、薬剤師の与えられている権限っていうものを考えていくと、ドクターの治療に対してどこまでしっかりと貢献できるかという方が患者さんの利益に繋がると考えています。言い方は悪いですけど、患者さんは病気のこと、薬のことをあまり知らないんです。知らない中で僕が1分2分と話したところで病気、薬剤に対する理解が深まるかって言うと、さほど深まらないですよね。ドクターが信念を持った処方というのに、私がそこに一つ言葉を加えることによって患者の信頼度が増すような活動の方が実際問題は患者も安心するし、医師も安心するしという考え方で今は投薬をやっています。
薬剤師は医師の治療を邪魔してはいけない。患者の医師への信頼を損なうような指導をしても医療の質は高くならない。医師の処方の意味を考えながら、患者の不安を取り除くような投薬を意識しています。

―――――熱いですね~、やっぱりMRならではの視点ですね。独りよがりの薬剤師の話も良く聞きますが(笑) 先生と対立というのもやっぱりありますか?

そのような話を聞くことはありますよね。自分たちだけの正義というのを持ってしまっている場合があります。疑義照会一つにしても、それが本当に薬学的観点からして重要かって言うとそこまで重要じゃないこともあるじゃないですか。正論は必ずしも正解ではない。医師は医師の考えでやっているんですよね。それをこっちで薬剤師としての考えをもとに押し通してしまったら何もかもが潰れちゃいます。医師との関係も悪くなるし、患者の医師への信頼も損ないかねない。そこのバランス感覚は絶対考えなきゃダメですね。
もちろん、患者の健康被害や、治療にマイナスに働くような処方にはきっちりと伝えなければと考えています。もちろん、医師の立場を考えながらですが。

―――――そういう考え方はMRならではかもしれないと思います。冷静と情熱の両方がありますよね。

僕は先生が好きですし、成功してもらいたいと本当に思っていますからね。

―――――きちんと連携されていますよね。先生の右腕みたいな感じで。

言うべきことはきちんと伝えています。これはマズいよ、ここは変えなきゃダメだってことは言います。そこに関しては、先生が必ず受け入れてくれるってわかっていますので。

―――――何も言えない薬局もありますしね。俺が言っているんだからいいんだよみたいな。

お話したように、そんな医師とは一緒にやる気はないですし、そこは何でも言ってくれと先生が言ってくれていますので安心しています。でも、意見をしっかりと伝えることができる環境を作っていくことも薬剤師としての大事な仕事ですよね。
採用品目のジェネリックへの変更とかも僕の判断でやっても良くて、事後の報告で構わないと言ってくれています。

―――――他の薬剤師さんが2名いらっしゃるということですが、様々な考え方をお持ちの方もいるので、従業員の中でのぶつかり合いとか話し合いとかありましたか?

そういうのは今のところ特に無いですね。普通にこっちの言うことは受け入れてくれてやっていますし、僕が知らないことも教えてくれるので、非常にありがたいです。僕自身、もともとMRで薬剤師の修行は半年ぐらいしかやっていません。勤務されている薬剤師は二人とも僕より経験が豊富なの、二人の意見は非常に為になるなと思いながら聞いています。
本当に、僕に足りないところを埋めてくれています。

―――――すごいです!それが聞けない人が多いですよね。プライドが高くて(笑)外から薬局を見ているとわからないですけど、こうやってお話を聞くと熱い薬剤師さんだと分かりました。今、一番注力されている取り組みはありますか?

より良い医療という観点を除くと、僕自身が医療機関の最も大事な患者に対する顧客サービスは何かと言うと、待たせないことだと思っているんです。患者さんは病気ですし、待ちたくないんですよね。詳しい説明を聞きたいとかもあるでしょうが、待たないことが一番大事かなと思っています。だから、常にどこが律速段階になっているのかってことは考えて、ここはこうすればもっと時間を減らせるんじゃないかとか、この業務をやりながら他の業務ができるなということはずっと考えながらやっています。あとは混乱させないことですよね。自分の話と先生の話が違ってしまったら間違いなく患者さんは混乱しますので、医師には業務が終わった後に必ず会いに行って、今日起こったこと、患者から受けた質問事項などを話し合うようにしています。

―――――毎日ですか?

ほぼ毎日ですね。こっちの仕事が終わらず、なかなか来なかったら先生がこっちに来て「今日どうだった?」と聞きに来てくれますしね。反省会やミーティングのようなきっちりしたフォームでやってしまうと続かないと思いますので、雑談に上手く織り交ぜながら、面白おかしくというと、いい加減に聞こえてしまうかもしれませんが、楽しい会話になるようにして、今日の仕事のフィードバックをしています。

―――――地域の他の薬局さんとも仲良くされているんですか?

そこまではまだ。私も薬剤師会に入ったばっかりなんで、お話はしますけど、連携を取れるまでにはまだ至っていないですね。近くの薬局の薬局長の方がすごく親しくして下さっていますので、たまにうちに無い薬があったら連絡してお願いしますというようなことは出来るようになってきましたけど。

―――――それはやっぱり患者さんを待たせないというとこですか?

そうですね。できるだけ待たせないことは考えてはいますね。あと患者さんが処方箋の画像をメールで送って下さったら薬は先に用意できるようにしています。

―――――お仕事が終わった後は先生と食事に行ったりされますか?

食事は本当にたまにしか行かないですね。何ヶ月に一回行くか行かないかぐらいですね。業務終了後に普通におしゃべりしには先ほど話したように毎日行っていますが、インフルエンザのシーズンはお互い疲れていたので飲みに行く気力も無いような感じでした(笑)

―――――MRのお仕事が生かされたと思う事はありますか?

常に医師の立場を考えて、発言する癖がついているところ。医師と親しくなっても、油断して、失礼な態度を絶対取らないところ。いろいろありますが、一番いいのはあまりプライドが無いことですかね。

―――――えっ!

言い方は悪いですけどね。薬剤師はどうしても患者からも医師よりは軽く見られるところがあると思います。また医師からも上から目線で見られてしまう。でも、薬剤師としてはそんな状態は面白くない。だからドクターに対して、必要以上に自分の意見を強く言っちゃったりして自分の存在価値を出していこうという部分が無理に出てしまうこともある。でも私はMR出身なので、必要以上に医師を立てる癖がついてしまっている。だから、自分が正しいと思うでも、平気で謝れます(笑)
喧嘩したって、何も生まれないし、今後の医療の低下を招くだけですしね。カッコ悪いかもしれませんが、喧嘩をしない、自分が折れればすむ場合は簡単に折れるというのが、MRとして身についてしまっているのは良かったと思います(笑)
あとドクターとの話し方ですよね。自分の意見をまっすぐに伝えるのではなく、相手が受け入れやすいように話しを進めていくという技術はMR時代に培ったものです。
同じ内容のことでも、気持ちよく受け入れてもらいたいですしね。受け入れてもらったけど、信頼関係はボロボロになるというようなことにはなりたくないですし。

―――――患者さんにも先生にも受け入れてもらえない人も時々いますからね。対応すると確実に怒らせるみたいな(笑)

まず話を聞かせるって難しいじゃないですか。医師に対して意見を言うのも「先生、これが正しいからやってくださいよ。」って言っても絶対受け入れないですよね。まず、相手の立場を肯定しながら、その立場をより良いものにできるように提案していく、そういった言葉の伝え方というのは営業時代に学んだことかなと思います。医師に対しても患者に対してもですけど。そこは自分のある意味強みなのかなと思うところはあります。

―――――MRを経験してから薬局開業するというケースは多いですか?それとも少ないですか?

結構多いと思います。MRの方が勤務医と仲良くなるチャンスというのは調剤薬局に勤めている方よりは多いんじゃないかなと思います。勤務医が開業していくわけですから、病院を担当しているMRに新規開業の話が回って来やすいのかもしれないですね。接待があったころは医師の本音を聞き出す機会も多くなるし、相談相手になることもあります。僕なんかもそうだったんで。
でも、それを目的にMRになろうって人は声がかからないと思います。本当にMRを一生懸命やっている人が多分声をかけられていると思います。

―――――その職業、資格という垣根を超えて人と人の付き合いで先生たちも見ているということですか?

見ていると思いますよ。絶対見透かされると思います。MRをずっと続けるつもりで頑張ってきた方がトップレベルになられていることが多い気がします。
それだけが目的になっちゃうと先生開業しませんか、僕とやりましょうと言いまくって煙たがられる場合も多いでしょうしね。

―――――開業した後に壁にぶち当たったことはありましたか?

やっぱり経営する難しさですよね。人を雇用するということはこんなに大変なことなのかというのが一番思いました。従業員と経営者は、同じ目線にはやっぱりなれないです。経営者としては当たり前のことを従業員は理解してくれない。
でも、従業員も薬局をより良いものにするために頑張ってくれていることは間違いない。
見方が違うだけでなんです。当然、軋轢が生まれました。
向いている方向は同じなのに、足並みをそろえられない。本当に悩みました。感謝しているのに、うまく伝わらない。自分も経営者として未熟であることを痛感しました。
あとはMR時代に外から見てわからなかった薬剤師の業務が、こんなにしんどいものだったのかというのが良く分かりましたね。MR時代、私は調剤薬局の業務はもっと楽だと思っていました。薬を調剤するだけだからパパっとやればいいじゃないと軽く見ていたところがあったんですよ。いざ入ってみると、ずっと動きっぱなしです。処方せんの確認から始まって、ピッキング、調剤、監査、服薬指導、薬歴入力、ここに疑義照会が入れば、処方箋と薬歴に記入しなくてはいけない。一人の患者にこれだけの作業が入ってくるわけです。もうホント動きっぱなしで、息つく暇もない。とてもハードな肉体労働をこなしながらの頭脳労働になるわけです。MR時代の私の甘い考えを心の中で、全国の薬剤師の先生にお詫びしました(笑)

―――――山本さんの薬剤師としての理念をお聞かせください。

同じ話になってしまうかもしれませんが、自分の意見を押し売りせずに患者さんと先生のバランスをしっかりとっていけるような話をしていくのが薬剤師として大事なことなんじゃないかなと思います。医師の考えを読み取って、短い時間では医師が伝えきれなかったことを患者に伝え、安心してもらう。一番大事なのは患者が安心して治療を続けていける環境を整えることです。それがクリニックの評判を上げることになり、患者が増えていくことにも繋がります。患者が安心して服薬できればコンプライアンスは上がるので治療の成果も当然良くなる。そしてまたクリニックの評判も一層良くなり、薬局の処方箋が増えることにもなります。クリニック、患者、薬局と3つのWINを築き上げることができます。

―――――でも、先生の後押しをしようというのはあまり聞かないですよね。そこはすごくいいと思います。
―――――スタッフもすごく楽しく話しやすい受け入れやすい職場環境になりそうですね。

そこはちょっとはっきり分からないですね。先生との関係は上手くできていると思うんですけど、うちに入って楽しいかは、まだ太鼓判は押せません。どうしても薬局に勤務するのは女性が多い。女性社会になってしまうと、私自身が男性なんでどういう風に接していくのが正しいのかははっきり分からないんです(笑) 私自身がもう中学からずっと男子校にいて、製薬会社も男社会じゃないですか。男社会しか生きたことないんで(笑)

―――――なかなかお休みの日は無いと思いますが、オフの日はどう過ごされていますか?

小学生の時からずっとラグビーをやっていたのでラグビースクールで指導したりしています。

―――――今の薬局からの展開として、人の募集が一番のポイントですか?

そうですね。まず募集をして、いい人材に巡り合うことが一番大事ですね。薬局の患者が60人/日平均でずっと動いていってくれれば、ここを任せられるような人を育てていけば自分自身が次の店舗とかも考えることができるじゃないですか。今は常勤の薬剤師は私一人の状況で、調剤以外の仕事のために動けない。
MR時代から付き合いの続く医師も多く、高校が医師の息子だけで1クラスできるような医師養成学校みたいな学校だったので、医師の友だちもいっぱいいるんですよね。そういった環境を今の自分が活用できるかというとできない。
でも、今の薬局をある程度任せることができる人材と巡り合えて、私が調剤業務以外でも動けるようになれば、活用機会もできていくんじゃないかなと考えています。

―――――薬局を任せられる方が見つかると良いですね。

そういう方に来てもらえると嬉しいですけどね。今のところは主婦のパートの方に来てもらっているだけで、彼女たちに能力があっても、家庭もあるので薬局業務を完全に引き受けてもらうわけにはいかない。
いずれは薬局を任せられる薬剤師と出会って、事業を拡げられるようになっていけばいいですね。

―――――未来を広く展開してこうという考えですか?

そうですね。そのために医療経営士という資格を取っています。ドクターに対して薬学的なところだけではなく経営的なアドバイスもできるようになりたくて。開業したければ事業計画書は全部自分で作れますし、損益計算表も作れます。後は診療圏調査もできます。MR時代がそうだったんですけど、対薬剤だけではなくて、医師のどんな相談にも乗れる総合コンサルタントとして存在していくことが大きな強みなっていくと考えていました。ですから、薬剤師としても、医師からのどんな相談に対しても乗れるようにしておこうと思ってやっています。開業前にはいろいろな不安が出てきますので、それを払拭していかなくてはならない。自分を選んでもらうためにはどうするか考えて自分に必要な能力を身につけていくのが今大事なとこかなと考えています。

―――――山本さん自身の価値を高めていくということですね?

そうですね。

―――――そのような相談に乗れる人はなかなかいないですよ。数字は難しいですよね。描いた通りにならないですし。

ならないですね。あれだけ綿密な損益計算書を作ったにも関わらず、やっぱり結果はずれました(笑)。

―――――一緒に働く”仲間”という観点でなんですけど、若い人じゃなくてもベテランの方が来られても全然気にならないですか?何十年もやっている薬剤師さんが来たら上から言ってくる人もいるのかなと思ったりするのですが。

そうですね。難しいところではあると思います。あまり上からこられても困るところもありますしね。そこは上から言ってこないようにしていくのも自分の仕事です。私の考えでは環境が人を変えていく、責任が人を変えていくんです。それで変わらない人間はもう変わらないんです。だからまずはその人の立場に立って説明して責任を与えることによってその人自身を変えていくことを考えていかなければいけないなと思っています。会社でもそうだと思うんですけど、リーダーになれば人は変わります。所長になれば、また変わります。やっぱり自分自身を変えていかなきゃダメなんですよね、絶対に。一番人を変えるのは必要であり環境なんですよね。必要がないことは勉強しようとしないんです。でもそこで必要だと分かれば変わってくれると思います。経営者としてはその必要や立場を与えていくのが仕事かなと思っています。

―――――「環境が人を変える責任が人を変える」いい言葉ですね。MRから調剤薬局の社長という環境になって考え方は変わりましたか?

そうですね。経営者になってしまったので、経営的な考えが出てきますよね。MRは湯水のように経費を使うところがあったりしました。でも、経営を始めると、経費削減をしないとやっぱり経営が成り立たない(笑)。
上司、同僚、後輩に言いたい事をバシっと伝えて正しいことを正しく伝えるっていうこともやってはきたんですけど、この立場になってくると伝わらないと意味がない、伝えるにはどうしたらいいかっていうことをまず考えて言葉を選ぶようにはなりましたね。私自身、弁が立つ方だったので会社員時代は言い負かしにいってしまうことが結構あったんですよね。

―――――論破してしまうことも?

論破してしまうことが結構あったので(笑)今では下の人間が論破するのと上の人間が論破するのは全然意味が違うんだと考えています。下の人間が論破しても上は結構納得することもあるんですけど、上の人間が論破するとしこりが残っちゃうんですよね。恨みが残ったり。何故かって言うとやっぱり下の人間の方が、下の人間という言い方は悪いですけどね、立場が下の人間に何かを言う時の方が言葉を選ばなきゃダメなんです。遠慮しながら言わないといけない。立場が上の人間と話すときよりも。立場が上だと、本人は意識していなくても権力を持っています。下の人間はどうしても権力を意識して、納得いかなくても折れることも多いです。だから、本人はそのつもりがなくても、正論でも頭ごなしにガーっと言われるとしこりが残ってしまいます。より優しく思いやりを持って言わなきゃ伝えなきゃという気持ちになっていますね。

―――――ほそやま薬局さんが求める薬剤師さん、そして薬剤師さんの未来がこうなったらいいなという理想像があったらお聞かせ下さい。

求める薬剤師像は何度も言うように独りよがりにならない方ですよね。まずなぜ自分があるかっていうのは、周りの人に支えられているからというのが分かっている人間でなければダメだと思います。
まず今の自分があるのはドクターのお陰ですよね、絶対に。ドクターからしてもそう思ってもらえるように動かないとダメだし。また周りのスタッフにも支えられているわけですよ。家族もそうですし、取引先の銀行だってそうですよね。税理士の先生だってそうですし。どこが欠けても薬局の仕事は立ち行かなくなります。自分というのは一人で成り立ってない。よく社会の歯車って言いますけど歯車っていうのは一つじゃ回らないんです。いっぱいあるギアがあってこそ回り始めるわけじゃないですか。回っているのは自分だけじゃないと理解することが大切です。そこを理解している人間かどうかっていうのが大事だと考えています。よくありますよね、営業マンで「俺はものすごく売って来ているのに。」って言う社員が。売ってくるっていうことは製品がないと売れないじゃないですか。製品を作っている人間がいるから商品があるわけじゃないですか。でも結構エラそうに言っちゃう営業マンはいますよね。事務だっていなかったら絶対に仕事は前に進まないし、自分一人では何もできないんだよ、そこまでわかっている?って思う時があるんですよね。そういうことを営業時代から考えることがよくありました。
転勤問題で感じたことなんですが、私が横浜支店にいた時によく若い子から地方に転勤したくないという話を聞くことがありました。どうしてか聞くと、「頑張っているから都会に残りたいです。」というわけです。「頑張っているから都会で仕事しているわけじゃないんだよ、たまたまそこで会社から仕事を与えられているから都会にいるだけなんだと。君の言い方は地方勤務の人間が頑張ってないように聞こえるよ。」と話をしました。「地方に行ったって君の何倍も頑張っている人間はいるんだよ。ほとんどの人間が都会で働きたいんだよ。でも地方で頑張ってくれている人間がいるってことを君は理解して物事を言っているのか。地方で都会に行きたいなと思いながらも我慢して頑張って人間がいるから都会で頑張れるんだから。君が次に地方担当になるってことは君にその順番が回ってきたんだよ。次は今まで都会で回らせてくれたことを感謝して地方で頑張ったら良いじゃない。」

―――――涙モノですね。その方は気持ちよく転勤されたんじゃないですか?

結局転勤はなかったので、行かなかったですけどね(笑)その話があった時は、要するに社宅が欲しいという相談で。当時の会社のルールでは結婚しちゃうと、社宅がもらえないんですよね。いわゆる現地結婚だと。次に転勤するともらえるんですけどね。結婚は自己都合になるので、独身寮から出て自分で借りなさいというルールなんですね。会社の家賃補助が少ないので、社宅が欲しいって言うから、人事の調査書に転勤希望を書いているのかを確認すると書いていませんって言うんです。社宅ほしいならどうして書かないの?書いたら転勤先社宅をもらえるから、転勤希望出しなよって言ったら、いやでも地方行くかもしれないですから(笑)って言うのでそれは違うだろとなって話したことなんです。だったらいいじゃない。地方に転勤するのが嫌なんでしょ、だったら我慢してやりなさいと言うと、いやでも頑張っているんでって言うから違う違うと(笑)
本当に自己中心的な考え方だなと思ったのを覚えています。
会社で組合の執行をやった時に工場の人の話を聞いて、これは心して売らなきゃいけないと思ったんですね。免疫抑制剤を作るために無菌状態で作らないとダメだから夏でも宇宙服みたいなのを着て、汗だくになって作っているという話を聞いた時に、衝撃を受けました。ここまで苦労して作ってくれた薬だから本当に心して売らなきゃダメだなと思いましたね。
軋轢を生んだり、相手の立場を考えずにものを言うのは、自分ひとりでやっているという考えがあるからなんですよね。その場の仕事は自分ひとりでやっているかもしれないですけど。薬を作ってくれなかったら売り物が無いですし、他にも色んな方に支えられて仕事ができているわけですからね。

―――――売るものがあるから、渡すものがあるからですね。

売るものがあるから、持ってきてくれる人がいるから。患者さんがいるから我々の仕事は初めて成り立つわけです。

―――――山本さんの好きな言葉はありますか?

好きな言葉・・・まだ好きな言葉という言葉はないんですが、いつも仕事でしんどいなと思った時に思う事があります。MRの新人の時に先輩が「そこまでやって仕事」ってよく言っていたんです。要するに何か一つの仕事を得意先にすることがありますよね、そこで終わって満足するのかしないのかというので全然成果が変わってくるという考え方なんですね。例えば感謝の言葉を伝えるのに「ありがとうございました」って伝えておしまいにするのかしないのか。普通では「ありがとうございました」でいいですよね。そこを成果に結びつけるためには、他の人と差をつけないとダメじゃないですか。じゃ手紙を書こう、礼状を書こうとなりますよね。礼状を書くとなると、今度はハガキで出していいのかということも考えていかなくてはならない。ハガキで出して礼状を良かったと思う人もいると思いますよね。でも実際問題ハガキというのはどうなのか、ハガキは本当は目下の者が目上の者に出すものじゃないんですよね。

―――――えっ!?そうなんですか?

そうなんですよ。ハガキは「葉書」、葉っぱに書くんですから。

―――――うあぁー、そうですかぁ!

じゃあ礼状はどういうふうに書けばいいの? 手紙でちゃんと書くべきとなります。

―――――封筒と便箋ですね?

そうですね。手紙を書くということはどういうことか。何で書く?ボールペンで書くのか水性ペンで書くのかという話になった時にその先輩が言うには万年筆で書けと。手紙の正式なフォームというのは万年筆で書くんだと教えられました。せっかく書くからには自分の言葉で書くのも大事かもしれないけど、しっかりと手紙の書き方から勉強して拝啓なんとかから書いてしっかりとした手紙を書くんだと。そこでまた差が付くぞという話をされて。そういった手紙というのはハガキと違って1枚作るのに1時間から2時間かかる。お前はどう思っているかわからないけど礼状を書いて成果が出る先生というのは手紙を書く苦労が分かっている先生なんだ。そこまでの手紙を書いたら、手紙を書いたことのある先生は相当な時間を費やして書いたことを分かってくれると。だから手紙を書く価値というのはあるんだと。それが全員に伝わるとは限らない。だけど5人書いて1人に伝われば成果は前同20%UPだ。俺たちは前同1%2%UPの世界で戦っているんだから10人に1人伝わればもうそれは大成功だ。医師の世界っていうのはものすごく封建的な社会。だから診療部長とかに出世している医師というのは必ずそういうことをやってきているからその心が伝わる。そして「ここまでやって仕事や」と言われたんですよね。その先輩は毎日夜中の2時3時まで仕事をしていて、今じゃ労務的に怒られるかもしれないですけどね。(笑) その先輩に仕事を教えてもらいながら、自分も夜中まで残って一緒にやってきたんですけど、本当に色々感動することが多かったですね。時間は有限なんで出来ないこともありますけど「ここまでやって仕事」ということを考えながら、医師に対しても患者に対しても自分が考えうることはできるだけ全部、数多くこなしていこうと考えています。それが一番大事と思いながら仕事をやっています。
もう一つは「もったいない」と思う気持ちが大事と思ってやっています。よく夜遅くまで仕事しますよね。もうここまでやったから帰ろうか、疲れたな帰ろうと思うのか、ここまでやったんだからもうちょっとやっていこうよと思うのか、もうちょっと成果が出るかもしれないからもったいないじゃないという考えです。自分がMR時代に病院に行って夜遅くまで、例えば10時ぐらいにしか会えないような先生とかいて、どうしても面会しなくてはならない用事がある。普通はそれが終わったら帰りますよね。でもそこで帰るのか、せっかく来たんだからもうちょっと他の先生にも会って帰ろうかなと思うのかで差が付くと思うんです。「ここまでやって仕事」というのと、「ここまでやったんだからもったいない」という気持ちがしんどい時の支えであったり、これをやればうまくいくんじゃないかと思っている2つの例ではありますね。

―――――伝えるというのは当時から徹底的にやられていたんですね。

そうですね、徹底的にやることを教えられたので。MRの新人の時に会社で伝説のMRと言われるような先輩が多くいる営業所に配属されて、その人たちの仕事を見られたのは運が良かったと思いますね。その方たちがものすごく可愛がってくれました。未だにその人たちには勝てないなと思いますしね。

―――――素敵な出会いですね。

一期一会じゃないですけど、開業する時も過去に担当していた先生が突然電話をくれて、アドバイスをしてくれました。安くやってくれる内装業者も紹介してくれました。薬局をやっている先生とかもうちの薬局を見に来いよ、教えてやるからと言ってくれました。薬剤師としての修行先も昔担当していた得意先の薬局の社長に電話して、「薬局を開局したいので、薬剤師として勉強をさせてください。もちろん勉強ですので、給料無しで構いません。」とお願いした時に、「給料は出すから、勉強に来なさい。」と言ってくれて。今思えばなんですけど個人薬局で開業医の門前で開業していて、しっかりと仕事が回っている場合、薬剤師をすぐに一人追加する必要は全くない。そこに無理やり勉強にきた薬剤師に給料出すってありがたい話ですよね。自分が開業してみて分かりました。本当に不必要な経費はできるだけ減らしたい。でも20万以上の給料を払ってくれたわけなんです。勉強しに来ただけですよ。一人薬剤師でも十分やっていけるのに。小さい薬局の中で薬剤師一人分の給料にあたる利益を出すって大変なんですよね。ものすごく感謝しました。

―――――ご縁がすごいですね。

本当に助けられましたね。今度は自分が助ける番だと思っています。

―――――新しく門をたたいて入って来てくださる薬剤師さんも素敵なご縁だといいですね。

そうですね。怖いのは面接じゃ何もわからないということですね。 開けてみないと絶対わからない。でも、相手も同じだと思います。迷うなら一回飛び込んでみて、自分で見て、後で判断すればいいかなと思うところもあります。MRの方だって薬剤師、薬局に興味ある方がいっぱいいらっしゃると思います。MRってどこの会社も先行き不透明で、どこの会社もMRを減らしたいという状況ですから。私のいた会社もMRは2000人ぐらいいるんですけど、もう社長は500人でいいって言っているらしいですし、みんな新しい世界に飛び込んで行きたいと気持ちは持っていると想像するに難くない。でも、薬剤師の給料をMRの給料と比較すると、MRよりも給料は安くなります。薬剤師として働き始めて、その後、未来をどう構築していくかということまで考えないと難しいですよね。

―――――今の山本さんのお話をサイトでMRさんが読んだ時に、今MRをやって頑張っていて、未来に悩んでいる人には心に響きそうですよね。元MRさんの採用は考えていますか?経験がないので厳しいですかね?

そんなことはないです、うれしいですよ。営業目線を持っていることはものすごく大事なことだと思いますしね。私もMRから、現場を未経験で修行させてもらいましたので、経験は今から、必死で積み上げていくという気概があれば大丈夫です。

―――――そういう人の方がいいですよね。 ずっと薬局でやっていた人は、なかなかそういう目線はないですからね。

MRは正しいことをまっすぐに伝えるだけじゃ伝わらないということが分かっています。
そういった意味ではMRの強みですよね。先生に対してこれが正しいんです。だからこうして下さいというのではなくて、先生の立場を鑑みながらそれを正しいと伝えることができるというのが営業の強みじゃないですかね。それをしてこないと営業の仕事はうまくいかないわけですから。

―――――上手に伝えることが大切ですね。

そうですね。医師もMRにお願いしてきたことでも、ルール上、製薬会社が対応できないことってやっぱりあるんですよね、それをダメですよと言って断ってしまうのか、ワンクッション置いてうまく説明するのか、結果に大きな違いが出ます。

―――――出来ない方法、出来ない理由を言うのではなくて、出来る方法を考えることも大切なのですか?

出来る方法を考えるとどんどんグレーゾーンに行ってしまう危険もあるんですけどね。でも、方法を変えると問題なく出来るときだってある。医師は基本的にはものすごく賢い方がなっているわけです。きちんと説明すれば、絶対に話は通じます。普通の人に話すより通じやすいと思います。伝わらないのは自分の会話の技術が未熟なだけです。

MRも現在大きな過渡期で、学術的な話、接待の話といった従来のMRがやってきた医師との対話だけでなく、嫌なことを医師に伝える機会も多くなっています。でもそのような経験を積んできたことは、必ず薬剤師としても重要なファクターになります。
MRとして、一流だった方は、医師から大きな信頼を勝ち取っているわけですから、自分で薬局を開業するチャンスにも恵まれていると思います。
医師からの信頼は大きな財産です。財産も使わなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。
その財産を活かせる、今後の人生設計を考えてみるのも面白いのではないでしょうか。

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